Saturday, July 14, 2007

Espresso Roma

アメリカ生活の中でこのコーヒーショップを忘れることは出来ない。
アメリカでの生活を始めた頃は、ちょうど学年が終了する6月だった為、ユニヴァーシティーディストリクトという州立ワシントン大学のキャンパスに隣接する学生街は夏期休暇で実家に戻ったり、旅行へ行ったり、アルバイトに明け暮れたりしている学生で街は学生数も多くなくひっそりとしてた。私は英語学校へ通っていたが、英語学校は日本人が多く、さらに高校を卒業してすぐの人などが多かったせいもあってあまり馴染めず、一人で時間を過ごすことが多かった。そんな時、私の住んでいたアパートのすぐ近くにあったのが「エスプレッソ・ローマ」というコーヒーショップだった。私は時間があればそこでラテ(エスプレッソにたっぷりのフォームミルクを混ぜた飲み物)を飲みながら過ごす日々が続いた。そのコーヒーショップは全くと言っていいほど洒落ておらず、なんとも殺風景なコーヒーショップであった。北から南に緩やかなスロープとなっているこの街のメインストリート・ユニヴァーシティーウェイに面して入り口があり、道沿いにテラスがあり2人掛け用のテーブルとイスが3つぐらい置かれていた。入り口から中へ入ると左手は南に面した大きな窓ガラスが奥のカウンターまで続き、天井が高く壁も床もコンクリートが打ちっぱなしの何なの飾りも無い、照明もあまりない店内だった。しばらくしてから壁に油絵とかが展示されてたと記憶する。南側に面したとてつもなく大きな窓ガラスはその店内の半分をを十分に明るくしていた。全体的にパッと見はまるでどこかビルの地下にある駐車場でコーヒーを飲んでいるような感じだった。さらにテーブルもイスもきちんと置かれておらず、なんとなくお客自体が好きな場所へ勝手に自分の好みの場所に置き、すべてが散乱していると言った方が適切かもしれないような配置だった。そんな店でも晴れた日に大きな南向きのガラス窓沿いでラテを飲みながら新聞を読んだりその通りを行きかう人達を観察していると本当に幸せな気分にしてくれた。
スタッフ達もカウンターでコーヒーやペストリーを販売した後は、ほっといてくれる店だった。そのスタッフ達の無関心さが逆に私を心地よくした。何時間そこで勉強していようが、新聞を読んでいようがほっといてくれる。アパートで一人勉強するのも悪くは無いが、やはりアメリカを肌で感じたいと思う欲求をそんな場所で過ごすだけで少しばかり満たしてくれた。またそのコーヒーショップのいいところは朝7時から夜11時までやっていることで自分の何時どんな時にでも利用できたことが良かった。特にアメリカ生活の始めの頃は思ったように英語も身につかない錯覚に陥ってかなりフラストレーションがたまる生活が続いた。そんな時に家にジッとしていると流石に滅入ることが多く、話さないまでも誰かと同一の空間を共有しているだけで安心したものだった。
ここので飲むラテは20オンスぐらいの厚手のガラスカップにラテがなみなみと注がれて出てくる。そのガラスのカップも綺麗な輝くようなガラスではなく表面が細かい傷に覆われたような、今考えるとどうかと思う程のものだったが、あの時はそんなことでさえアメリカの大雑把さ、ガサツさに感動していた。その大きなカップをゴトッとテーブルに置き、人の座っていないテーブルに置かれている黒いプラスチックの灰皿を目の前に置いて英語学校の宿題とか新聞を読みながらその辺にいる学生だかなんだかわからないアメリカ人に同化しようとしているだけでアメリカ生活という言葉が頭の中を駆け巡っていた。
あれから既に19年が経ち、このコーヒーショップも「Cafe on the Ave」というお洒落な食事なども出来るレストランになったことをインターネットを通じて知った。いつまでも残っていて欲しかったあのコーヒーショップ。もしこれからシアトルへ行くことがあったら是非一度立ち寄りたい。自分の目でどれだけの時間が過ぎたのかを実感できると思うから。

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