Saturday, June 16, 2012

高齢化社会へようこそ  1年たって その1

日本に帰ってきてあっという間に1年が過ぎてしまった。 2011年5月29日のフライトで降り立った成田空港は台風のようなひどい雨だった。当初はバスで帰ろうかとも思っていたが家族5人(当時は)で大きな箱が11個を抱えての帰国だったから空港から実家まで片道レンタカーを頼んでおいてそれは正解だった。 あれから1年。子供たちも日本の生活に慣れ、日本語もかなり話せるようになった。うちの奥さんも週1回は日本語教室に通ったりしてそれなりに日本の生活に慣れようと努力してる。今後のために日本の運転免許もとったりしてしているので、車を購入するとさらに行動範囲が広まり楽しくなるだろう。 帰ってきたときにはまだ起き上がったり食事をしたりしてた母は昨年の夏に肺炎になって入院してからは寝たきりの生活となってしまった。もともと脳梗塞を患ったことがあり、その影響か寝たきりになるのはあっという間の出来事だった。今まで日本はいろいろな面できちんとしていると思っていたが、あの母親が肺炎で高熱が出て救急車を呼んだ時は何とも自分の母国日本に対する買い被りに呆れた。救急車が早く来てくれて、母を救急車に乗せこむまではいいが、そっから先が大変だった。受け入れ先の病院が見つからないのだ。例え熱だけだといっても79歳にもなる老人の高熱はやはり危険を感じる。救急車を呼んだのは夜の11時過ぎだったが真夜中になろうとしている時間まで救急隊は電話で受け入れ先を探している。 理由はいろいろあった。「病院のベットがいっぱい」「当直の先生がいっぱいいっぱい」「緊急処置室まであふれてる」最後の最後になんとか個室が空いているのでとりあえず連れてきてくださいという病院にたどり着いた。緊急隊員のリストにはたくさんの病院、それも緊急受け入れ可能の病院があったようだが、実際に受け入れをしてくれるとこは少ないようだ。物理的に不可能はわかるが、母以上に緊急を要する患者の受けれがこのような状況だと本当に困る。報道でよく医者不足や緊急対応が不可能という話題をよく見るが実際にその立場になると改善が本当に必要だということを実感する。 そんなこんなで夜中の街を救急車で駆け抜けて病院にたどり着いたが、さらにそこで医者と看護婦がバタバタとしてようやく落ち着いたのは1時が過ぎていた。母はレントゲンを確認したところ肺炎と判断され、それに合った薬をうたれて熱も下がり落ち着いた。一通りの入院の手続きを済ませ、夜中なので病院から用意してくださいというものもそろえられないのでその日はとりあえず落ち着いた母を確認してから家に帰った。 それからの3ヶ月はそれなりに大変だった。父はいくら夕方といっても夏の暑い時期にバスに乗り継いで病院に通った。土曜、日曜日は私が担当して病院に通った。1ヵ月が過ぎて流石に父も疲れたのか平日でも行かない日が出てきたので私が会社帰りにできるだけ曜日を決めていくようにした。母の肺炎は何とか快方に向かい11月には退院ができそうな兆しが出てきた。ただ、肺炎の原因となった誤嚥はそのままだったので胃に直接栄養剤を流し込む為の胃瘻を作るか、その時のしていた鼻からチューブを胃に直接入れて栄養剤を流し込む方法のどちらかで過ごす必要があった。母の場合は以前に胃の半分以上を摘出しているため、胃瘻を設けることができず、鼻からのチューブで栄養と薬を入れ込む方法で過ごすことになった。ただ、これに関してはやはり通常が看護婦がやるような作業だが家に連れて帰ると決めていた父は医者の指示通り、父と私の妻が病院に3週間通い栄養剤の与え方や、おしめの替え方、痰のとり方など一通りの実地授業を受けて11月に無事家に戻ってきた。 家に帰ってからは介護保険を使い、朝晩に1回ずつ下の世話や体を拭いたり、口の清掃をしたりするヘルパーさんが来てくれて父と私の奥さんの手間を軽減してくれるようにケアマネージャーがすべてアレンジをしてくれた。鼻からチューブを入れているので衛生面に関してとても慎重に対処しなくてはならず、毎週1回は看護婦さんが様子を見に来ることになった。鼻からのチューブはやはりボケた頭の母にとっても邪魔だとみえて、帰ってきて二日目ぐらいにいきなり朝引き抜いてしまってあわてて看護婦さんを呼んだりした。何度かそんなチューブ引き抜き事件があってからは母の引き抜きも落ち着いて多少抜くぐらいだと父がゆっくりとチューブを入れ直したりたりするようになった。最近分かったことだが、この鼻からチューブでの栄養剤注入というのはとても危険が伴うようでこの状態の患者を一時的に預かってくれるところはないそうだ。胃瘻でも厳しいらしく、鼻からのチューブの患者の一時預かりは皆無だそうだ。それだけ大変なことをうちの奥さんが文句も言わず毎日こなしているというのは頭が下がる、、というか全く持って頭が上がらない。